Health Savings Account:税制優遇口座のチャンピオン
Updated: Jul 2
Health Savings Account (HSA)をお持ちですか。HSAは、医療費の支払いに使えるチェッキング口座のようなものですが、優れた税制優遇の特徴を持っており、リタイア後のための資産形成にも使えます。今回の記事では、このHSAについて詳しく紹介します。
税制面の特徴
税制優遇のある投資口座には、401(k)やIRA、Roth IRAなどがありますが、それらとHSAを比較すると下表のようになります。HSAだけが拠出時、運用時、(医療費支払いのための)引き出し時ともに非課税と、どの段階でも課税されない特徴を持っています。
これがどういうことか、経済効果を考えてみます。もし手取り(所得税課税後)の給与から1万ドルの医療費を払ったとしたら、額面(所得税課税前)の給与は1万ドル以上必要になります。税率によって異なる必要額面所得は、以下の通りです。
HSAからの支払いであれば、額面所得1万ドルで済みます。額面所得1万ドルに対する所得税を免除してくれているので、その分は医療費補助と考えることができます。そうすると、例えば所得税率22%の場合、経済効果は以下の図式になります。
HSAを医療費以外の支出に使ってしまうと、所得税のほかに20%のペナルティがかかってしまいますので、ご注意ください。ただし、65歳以降は、医療費以外の支出に使ってもペナルティはかかりません(所得税はかかります)。したがって、65歳以降は医療費以外の支出に対しても、Traditional 401(k)/IRAのように利用することができます(医療費支出は引き続き非課税)。
また、HSAから非課税で支払える医療費(IRS Publication 969、Publication 502で規定)はDentalやVisionも含めて幅広く、一部の保険料も含まれます。以下の保険料は、HSAから非課税で支払えます。
65歳以上の人のメディケア保険料(除くメディギャップ)
長期介護保険(制限あり)
COBRA
HSAを開設するには
HSAを開設できるのは、IRSが規定するHigh deductible health plan (HDHP)に加入している人に限られます。勤務先から提供される保険やACA Marketplaceで加入する保険には、HSAを開くことができるタイプかどうかの情報が明示されています。HDHPは、IRSが定める水準以上のDeductible(保険支払いが始まる前の自己負担金額)がある保険のことです。
HSAの口座は加入する保険会社ではなく、別の金融機関に開設します。勤務先提供の保険の場合、金融機関が指定されているかもしれません。ACA Marketplaceで加入する保険の場合、ファンドの品ぞろえやキャッシュへの利息、口座維持手数料、オンラインの使い勝手などから、自分で選ぶことができます。口座開設後は、支払いに使うためのデビット・カードが送られてきます。
なお、HSAに拠出できる金額には、401(k)、IRAなどのように年間上限があります。2024年は、以下の通りです。
Single coverage: 55歳未満$4,150、55歳以上$5,150
Family coverage: 55歳未満$8,300、55歳以上$9,300
まとめ
HSAはHDHPに加入していることが条件になりますが、拠出、運用、医療費支払いのための引き出しの三段階で非課税になるという、優れた特徴を持っています。
また、65歳以降は医療費以外でもペナルティなしで引き出しができますので、Traditional 401(k)/IRAのように使うこともできます。また、メディギャップ以外のメディケア保険料が非課税支出の対象であることも見逃せません。
よく分からないのでHSAを作ってなかった、あまり拠出してなかったという方は、開設や追加拠出を検討してみてはいかがでしょうか。拠出期限は、IRAと同じく、翌年の確定申告期限(4月15日)です。