2024年12月21日、米国上院はH.R. 82, the Social Security Fairness Act of 2023を可決、そして2025年1月5日、バイデン大統領が署名し、同法案は成立しました。この法律は長年にわたり、ソーシャル・セキュリティ税対象外の雇用に基づく年金を受給している人に対して、ソーシャル・セキュリティ給付を削減してきた2つの条項、Windfall Elimination Provision(WEP、棚ぼた防止規定)とGovernment Pension Offset(GPO)を廃止するものです。
この法律により、WEPまたはGPOの影響を受けてきた受給者の年金が増額されることになります。
これまで日本の厚生年金と米国のソーシャル・セキュリティを同時に受給すると、WEPによる減額の可能性がありました(詳しくは、「ソーシャル・セキュリティと厚生年金:棚ぼた防止規定(WEP)」)。
WEPは、ソーシャル・セキュリティ税の対象ではない所得に基づいた年金(Non-covered pension)をソーシャル・セキュリティと同時に受給している場合、ソーシャル・セキュリティが減額される制度です。Non-covered pensionは、ソーシャル・セキュリティの加入対象とならない年金制度のことで、連邦・地方政府の職員や教員などが加入する年金制度の一部や外国の年金制度が該当します。
Social Security Fairness ActのWEP・GPO廃止による増額は、2024年1月以降の給付にさかのぼって適用されます。Social Security Administrationは、実施方法ついて検討中です(SSAによる最新情報は、こちらのページをご覧ください)。
米議会予算局は、この法律の施行により、約250 万人の受給者の給付が増加すると見積もっています。
財務上の影響と懸念
Social Security Fairness Actについて、財政への影響を懸念する声も上がっています。議会予算局は、WEP と GPO を廃止すると、今後10年間で約1,960 億ドルの費用がかかると予測しています。
この支出により、ソーシャル・セキュリティ信託基金の枯渇が6か月早まると予想され、広範なソーシャル・セキュリティ改革の必要性が高まることになります(詳しくは、「ソーシャル・セキュリティ:引き続き厳しい財政状況に直面」)。
本件に関して今後も動向を注視し、皆様に有用な情報を提供していきます。ご自身の受給(見込み)額への影響をお知りになりたい方は、個別にお問い合わせください。