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  • Writer's pictureHiroshi Goto

日本への帰国:米ドル預金の為替差益への課税を回避するには

ドル円為替レートは、2022年以降大きく円安になりました。意外に思われるかもしれませんが、日本帰国後に米国居住中に得たドル預金を円転した場合、為替差益があれば雑所得として申告が必要になる可能性があります。今回の記事ではこの問題および対策について、整理したいと思います。

 

米ドル預金の為替差益への課税

 

米ドル預金の為替差益は雑所得

一般に外貨預金の為替差益は、「雑所得」として課税されます。ただし、以下の場合は申告不要です。

  • 年収2,000万円以下の給与所得者で、為替差益を含めた給与所得以外の所得が年間20万円以下

  • 公的年金等収入400万円以下(公的年金等の全部が源泉徴収の対象)の年金所得者で、為替差益を含めた年金所得以外の所得が年間20万円以下

  • 全ての所得の合計が48万円以下(基礎控除の範囲内)

 

為替差(損)益の計算は、外貨預金預け入れ時の為替レートと円転時の為替レートの差になります。例えば、1万ドルの外貨預金を持っていたとして預け入れ時の為替レートが1ドル110円、円転時の為替レートが1ドル150円だったとします。この場合、

預け入れ円貨:1万ドル×110円=110万円

円転時円貨:1万ドル×150円=150万円

したがって、為替差損益は150万円-110万円=40万円の為替差益ということになります。

 


米国居住中に得た米ドル預金の為替レート計算は極めて複雑

そもそも米国居住中に得た米ドル預金に為替差益があるとみなされて、日本で課税対象になるというのは、寝耳に水という方も多いのではないでしょうか。円転によって為替差益が確定するので、円転時に日本居住者であれば、所得として認識する必要があるというのがその理屈です。


米国居住中に得た米ドル預金の預け入れ時為替レートは、円からドルに両替したわけではないので、口座に資金が預け入れられた日の為替レートで評価せざるを得ません。口座には、入りもあれば出もあるわけで、資金が入った日の為替レート、出た日の為替レートを何年も取得して、預け入れ・払い出し金額で加重平均した為替レートを計算することは極めて困難です。そのため、実務的には米国居住期間中の平均レートでも許容されるようです。

 

 

為替差益への課税を回避するには

ドル円為替レートは、2022年以降大きく円安になりました。このため、日本に帰国した後に米ドル預金を円転すると、上記の計算方法によって大きな為替差益が実現するという方も多いでしょう。そのような場合、以下の回避策が考えられます。

 

一つには、日本帰国前に円転することです。日本にまだ居住していない段階では税法上の非居住者であり、所得は課税対象ではありませんので、為替差益を申告する必要はありません。国際送金が難しい昨今ですが、帰国前にWISEなどを使って円転、マルチカレンシー口座に滞留させておくか日本の銀行口座に送金するという手はあります。

 

もう一つは、米国居住中に米ドル預金を引き出して資産(有価証券、不動産など)を購入することです。この場合の資産は、有価証券、とりわけMoney Market Fundのような安全性、流動性が高く、取引コストがほとんどかからないものがよいでしょう。なお、日本帰国前は当該資産のインカムやキャピタルゲインは米国で課税対象になります。

 

帰国前に当該資産を売却して米ドル預金に入金した場合、その日のレートが預け入れ時のレートになります。為替レートがリセットされることで、資産購入前の米ドル預金にかかわる為替差益はなくなりますし、近い将来円転した際の為替レートとの差も小さくなります(円安、円高、両方の可能性があります)。

 

帰国後に資産を売却することも可能です。その場合は、資産購入時の為替レート、資産売却時の為替レートを用いて資産価格を評価、売却差損益を計算し、日本の確定申告の適切な所得に入れる必要があります(帰国後のインカム収益も日本の課税対象。また資産種類・所在によっては米国でも申告が必要です)。さらに資産売却(米ドル預金預け入れ)時から円転時の為替差益は雑所得になります。いずれにしろ、この方法でも、資産購入前に発生した米ドル預金にかかわる為替差益について、日本の所得として認識する必要はなくなります。

 

米国居住中に得た米ドル預金の為替差益が日本で課税対象になるのは意外に思われた方も多いと思いますが、対応策がないわけではありません。日本の税務の詳細は、専門の税理士や税務署にご相談ください。

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