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  • Writer's pictureHiroshi Goto

US Frontlineコラム:金融サービスを利用する前に知っておきたいこと

(この記事は、2024/8/7付け同タイトルのUS Frontlineコラムの転載です。)


保険、証券、投資運用、不動産など金融関連サービス事業者(以下「金融業者」)の顧客担当者は〇〇アドバイザー、△△コンサルタントなど様々な肩書きを持っていますが、必ずしも顧客の立場から接してるとはかぎりません。相手がどのような視点から話をしているのか知っておくことは、自分に合った金融サービス、商品を選択するうえで、大切なことです。


金融サービスを利用する前に知っておきたいこと

 

 

適合性原則と受託者責任

金融業者に対する顧客保護の規制には、大きく分けて適合性原則と受託者責任の2種類があります。

 

適合性原則(Suitability Standard)とは、金融商品販売にあたって事業者は、顧客の目的や金融商品に関する知識・経験、資産の状況等を十分に把握し、それらに適合した商品を販売しなければならない、言い換えると適合しない商品は販売してはならないというものです。証券仲介、保険、不動産はこの規制の適用下にあります。近年では証券業界を中心にSECによる厳格化の流れがあり、顧客利益保護規則(Regulation Best Interest)のもとで顧客の最善の利益に適う投資推奨や金融商品等の販売を行うことが強く求められています。

 

受託者責任(Fiduciary Duty)は、善管注意義務や忠実義務などからなり、専門家としての知見を用いて顧客の最善の利益のために行動しなければならないという法的な責任です。一般には顧客に対する弁護士、信託(Trust)の受益者(Beneficiary)に対する受託者(Trustee)、株主に対する取締役が受託者責任を負っている例ですが、金融サービスでは、資産運用会社(ミューチュアル・ファンドや投資一任勘定の運用)、登録フィナンシャル・アドバイザー(Registered Investment Advisor)が顧客に対して受託者責任を負っています。証券会社でも投資一任型サービスを提供する業者は投資顧問登録を行っており、法的に受託者責任を負っています。

 

適合性原則の適用下にある金融業者の場合、顧客属性に適合しているというミニマム・スタンダードを満たす商品の中で、自社・担当者に有利な商品販売につながりやすい傾向があります。受託者責任を負っている金融業者の方が高度な行動規範下にある点で望ましいですが、完ぺきではありません。どちらにしても、利益相反の可能性について認識しておく必要があります。

 

 

手数料体系と利益相反の可能性

利益相反とは、サービス提供者と顧客の利益が相反する(一方の利益がもう一方の不利益になる)ような状況のことです。利益相反の可能性は、金融業者のビジネスの様々なところに存在していますが、ここでは顧客が支払う手数料との関係で見てみましょう。

 

金融業者の手数料には、コミッション(取引高に対する販売手数料)や残高フィー(残高に対して定率をチャージする手数料)があります。

 

コミッションは、証券仲介、保険販売、不動産取引で一般的です。手数料がコミッションである場合は、取引を誘引する、取引高・販売高を大きくするというインセンティブが業者側に働きやすいです。担当者の報酬が取引件数や取引高をベースにしている場合はなおさらです。取引を行うことや最も金額が大きい取引が顧客にとって最善の利益とは限りません。

 

残高フィーは、多くの資産運用会社や投資一任サービスを行う登録フィナンシャル・アドバイザー・証券会社で一般的です。この場合、業者側に残高を維持しよう、大きくしようとするというインセンティブが働きやすくなります。ここでも、金融業者のビジネス維持・拡大につながる行為・アドバイスが、顧客にとって最善の利益とは限らないことに留意が必要です。

 

 

利益相反を可能性にとどめるには

どんなビジネスであっても、提供者と顧客の利益相反の可能性を完全に排除することはできません。したがって、利益相反を可能性にとどめ、自分に不利益な形で実現させないことが重要になります。

 

金融サービスを利用する際には、以下の点に注意して、賢い顧客になりたいものです。

  • 顧客が直接・間接に負担する手数料体系は明確にされているか、妥当な水準か

  • 重要な情報が分かりやすく、きちんと提供されているか

  • 担当者は企業文化、業績評価、報酬体系などによってどのような動機付けをされているか

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