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Writer's pictureHiroshi Goto

ソーシャル・セキュリティと厚生年金:二重加入期間がある場合のWEP減額は?

Updated: May 29

ソーシャル・セキュリティと厚生年金を同時に受給すると、棚ぼた防止規定(Windfall Elimination Provision、WEP)により、ソーシャル・セキュリティに所定の減額が適用されます。この仕組みについては、「ソーシャル・セキュリティと厚生年金:棚ぼた防止規定(WEP)」で詳しく説明しました。今回の記事では、両制度への二重加入期間がある場合のWEP減額の計算について解説します。



ソーシャル・セキュリティと厚生年金の二重加入期間

 

WEPは、ソーシャル・セキュリティ税の対象ではない所得に基づいた年金(Non-covered pension)をソーシャル・セキュリティと同時に受給している場合、ソーシャル・セキュリティが減額 される制度です(遺族年金は対象外)。


Non-covered pensionは、ソーシャル・セキュリティの加入対象とならない年金制度のことで、連邦・地方政府の職員や教員などが加入する年金制度の一部や外国の年金制度が該当します。

 

 

ソーシャル・セキュリティと厚生年金の二重加入

日本企業からアメリカに駐在した方には、ソーシャル・セキュリティと厚生年金に同時に加入していた期間がある場合があります。特に2005年10月の日米社会保障協定施行前は二重加入免除の仕組みがありませんでした。

 

この場合ソーシャル・セキュリティの計算上、厚生年金は、二重加入期間はCovered pension、厚生年金のみ加入期間はNon-covered pensionというややこしいことになります。

 

例えば、以下の加入期間の例を見てみましょう。1986年1月から日本で厚生年金に加入し、1996年1月にアメリカに赴任し、ソーシャル・セキュリティに加入したとします。そのまま、2005年12月までは厚生年金に継続加入し、2006年1月からソーシャル・セキュリティのみになった場合です。



 これはどのようにWEP減額に考慮されるのでしょうか。

 

 

二重加入期間がある場合のWEP減額

二重加入期間がある場合でも、毎月の減額は「最大で587ドル(2024年)か厚生年金月額の半分の小さい方」という原則は同じです。

 

ちなみに、この587ドル(2024年)は、通常のPrimary Insurance Amount(PIA、標準受給開始年齢での老齢年金額)とWEPが適用された場合のPIAの差額を表しています。詳しくは、「ソーシャル・セキュリティと厚生年金:棚ぼた防止規定(WEP)」をご覧ください。


WEP PIA

 

二重加入期間がある場合、「最大で587ドル(2024年)か厚生年金月額の半分の小さい方」の「厚生年金月額」をNon-Covered Pensionの期間÷厚生年金の全加入期間で(月単位で)按分します。

 

さきほどの加入期間の例では、Non-Covered Pensionの期間÷厚生年金の全加入期間は1/2でしたので、もし厚生年金の月額が12万円(1ドル=150円換算で800ドル)の場合、WEP減額の上限を計算する際の「厚生年金月額」は800ドル×1/2=400ドルとなります。さらに減額の上限は「厚生年金月額の半分」ですので、400ドル÷2=200ドルです。上記のPIA計算では200ドル<587ドルですので、WEP減額幅は200ドルが適用されます。

 

厚生年金の受給があるかどうかはソーシャル・セキュリティの年金請求時に確認されると思います。または、ソーシャル・セキュリティの年金請求より後に厚生年金の受給を開始した場合、その旨をソーシャル・セキュリティ・アドミニストレーションに報告する義務があります。どちらにしても、二重加入期間がある場合はWEP減額の計算に反映する必要がありますので、しっかり説明し、減額されすぎないようにしましょう。

 

なお、日米社会保障協定による加入期間通算10年以上を使ったソーシャル・セキュリティの受給資格の場合、そもそもWEP減額対象にはなりません。したがって、二重加入期間の考慮は必要ありませんので、ご安心ください。

 

ソーシャル・セキュリティと厚生年金の年金請求タイミングを工夫することでWEP減額の影響を小さくすることに興味がある方は、以下のブログ記事をご覧ください。

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